VCAの製作〜夏の終わり・最後の怪談〜

レポートが遅くなってしまったのだけれども、VCAを2台製作しました。回路的にはMS-20VCA相当のものです。回路は毎度お世話になっております、takedaさんのページ(http://www.aleph.co.jp/~takeda/radio/homemadesynth.html)にあるこの回路図(http://www.aleph.co.jp/~takeda/radio/harvest/img/schem/MS20-VCA-schem.gif)を参考にさせて貰いました。というかそのまま組み立てました。ありがとうございます。
回路の仕組みはなんとなくわかるんだけれども、手元のMS-20の回路図と見比べると、どうやらMS-20ではトランジスタを一個しか使ってない模様。2つ使うってことは、CVのカーブが変わるのかな? 直線と対数カーブの違いかな? オペアンプ周辺はバッファアンプなのでVCAの回路自体はすごく小規模。基本的にはCVトランジスタの増幅をコントロールしてる感じ。何が行われているかはなんとなくわかる、そんな回路。
簡単な回路なので製作自体は難なく終了。心配だったDC漏れも、そんなに気になるほどじゃない感じ。恐らくEGでドライブさせたときはほとんど気にならないんじゃないかな、と楽観的な予想が出来る程度。


ところで同じ回路を2つ作るとなると、何か部品に違いを持たせてその違いを検証してみたくなるのが健全なハンダゴテイストというもの。というか全く同じ部品で全く同じ回路なんて(基板を感光しているならまだしも)根性無しの僕には作るモチベーションが上がりません。
さて、ギターのペダルエフェクターハンドメイドの世界では「とにかくDALEの金属被膜抵抗使っとけ」っていう風潮があります。ありますよね?? 確かにDALEの金被って太い音がするような気がするんだけれども、同じ回路を別抵抗で組み立ててテストしてみたことなどはもちろんない。完成したものを使って「やっぱ音太いねー」とか言い合う日常。それはそれで満足感で気持ちのいい演奏が出来ればOKではあるんだけれども、やっぱり一度ちゃんと検証してみたいなぁ、と思ってたところなのです。単に「いいよね」じゃなくて、じゃぁ実際低音の通りがいいのか、それとも実は高音が落ちてて相対的に太い音に聴こえるのか、はたまた別の理由があるのか、もしかしてすべて気のせいなのか、確かめてみないと気持ち悪いし。
そもそもすべてのパーツが想像上の理想パーツであれば、抵抗を通しても音質の変化なんておきないはずなんだけれども、実際はそうはいかない。パーツに使われる素材とかその質で音質が変わるのがリアルな世界。具体的には抵抗一本通すだけで微妙にノイズは乗るし、微妙に音の特性も変わる。抵抗値が大きければ大きいほど高音が削れていく。微妙ではあるけれども、それが何本何十本になれば人間の耳でも聞き分けられるほどの差がでることになる。


そんなわけで今回の2つのVCAはDALE金属被膜抵抗(1/2W、一本60円)バージョンと、普通の安い金属被膜抵抗(よくみるブルーの奴、一本20円)の2つのバージョンで組み立ててみることにしましたー! ヒュードロドロドロドロ。


早速ヒアリングテスト。VCOからVCAに直で繋いで、VCAはGATE信号でオンオフさせてやる。あー、違う違う、やっぱ違う。微妙な違いだけれども、DALEのほうは押しが強くてドーンとした感じ、一方ブルー抵抗のほうはやや細いというか、つまった感じがする。ギターエフェクターでもこんな感じで違いが出るんだよなぁ。もちろんこれ、どっちがいいっていうんじゃなくて、実はギターエフェクターとかの場合、DALEを使うと音がイタくなりすぎてボーカルの邪魔になったりすることもあったりする。とにかく差は出た。つーことでMP3。MP3にしちゃうとほとんどわかんないレベルかもしれないけれども・・・・。大きな音で鳴らせばなんとなく違いがわかるんじゃないかな。微妙な質感の違いだけど。うーむ、今改めて聴いてみたけど、ほとんど違わないと言ってもいいレベルかも。ヒュードロドロ。



■リーズナブルな値段のブルー抵抗
http://www.chienowa.org/ca3080/vcatest002.mp3


■DALE抵抗
http://www.chienowa.org/ca3080/vcatest001.mp3


わかんないよなぁ、パっと聴きじゃ。ていうかごめんなさい、ほぼ同じですね。MP3にする前はもっと違いがわかったような気もするのですが・・・・。ヘッドフォンで聴くよりスピーカーで大きめの音で聴いたほうがわかりやすいかも。どっちにしろすごい微妙ですが。まぁ、とりあえず特性を測定。ノイズジェネレータの出力をVCAに入れて、波形測定ソフトで測ってみました。



赤がDALEバージョンで緑がリーズナブルバージョンです。うぅむ! 特性はほぼ同じ、リーズナブルバージョンのほうがほんのちょっとレベルが小さいだけ、という結果なのかな、これは。これくらいのレベル差は、抵抗値の誤差とかの範囲内のような気もするし・・・・・。気のせい説有力? でもそうなると、リーズナブルバージョンのボリュームをちょっと上げてやれば同じ聴こえ方をするはずなんだけれども、どうもそうも聴こえないんだよなぁ・・・・。うーむ困った。ヒュードロドロドロ。


あ、そうか、ノイズレベルね。それも測らなきゃ。VCAの入力には何も繋がずに無音でドライブさせた時にどれだけノイズが乗っているか。音が出ているときにもこれらのノイズ成分は音にプラスされているってことになるわけなんで、えーととりあえず測ってみよう。



出ましたよ明らかな差が! 赤がDALEバージョンで緑がリーズナブルバージョン、黒いグラフはVCAをドライブさせてないときのミキサーからそのままのノイズレベルです。16KHz手前にあるピークはVCOの発振が漏れているのかな。これは明らかに違いますね。つまり、DALEバージョンは微妙にSN比がいい、ってことになるのかな。もちろん耳には聞こえないレベルでの出来事ではあるのですが。出力レベルの大きさも、リーズナブルバージョンのレベルを上げちゃうとノイズも上がっちゃいますから、誤差じゃなくて性能差と捉えていいんじゃないでしょうか。


さてどうまとめて良いのかわからないですけれども、結局作るひとの嗜好性と満足度と予算に応じて、ってところなんですかね。出てくる音は確かに違いますが、とても微妙なものだし、どちが良いとも言えないわけで。もちろんこの結果を見て「こんなに違うのか、やっぱDALEだな」って言うひともいれば「同じじゃん、安いのでいいよ」ってひともいるでしょう。どちらでもいいのだと思います。自分の嗜好性を他人に押し付けたりしなければ、笑。ただまぁ、コストが高いと言っても一本数十円の差なので、こういうところにお金をかけれるのもハンドメイドの醍醐味ですし、コストに比べたら自己満足度は大きいかなぁ、とも思ったりしますが。


ちなみにバッファに使ってるオペアンプも、家にあるシングルのものをあれこれ乗せ変えて測定してみました。とは言っても3種類しかストックがありませんでしたが・・・・



赤が5534、緑がOPA134、青は071です。上のグラフがノイズ入力時の特性で、下は無音時のノイズレベルです。グラフを見てわかるように、071は明らかに誰でもわかるくらい出音がチープでした。つまりまくっている印象。でもまぁ、チープですが味はあるというか、これはこれでチープな音が出る機材として使えそうな感じもしましたが。OPA134が5534よりノイズが多いのは意外でしたね。使い方にもよるのでしょうが、音もややスカっとした感じになります。5534が一番ファットで力強い感じがしました。


抵抗にこだわる前に、自分のお気に入りのオペアンプを探すほうがよさそうですね。OPA134が400円なのに対し5534は100円くらいで買えますから、この辺り上手くやらないと間違ったコストのかけ方をしてしまう可能性はありますね。


え? 僕ですか? DALE抵抗に5534で完全に決まりですよ。やっぱ音がネチっこいもん! 汗。


ちゃんちゃん。


次はエンベロープジェネレーターか。なんか仕事のほうがやや忙しくなってきたので、今月はペースダウンの予感。しかしあとEGVCFを作れば、一応ひと通りアナログシンセの基本モジュールは完成です。うーむ、飽きっぽい僕ですがなんとか完成できそうだ。がんばれ自分!